没落と廃退

日常系ブログです。

2019年2月6日

放置自転車

外から来た人にはそれまでの経緯というものはわからない。引っ越してきて、昔からあるように見えた散髪屋も「1周年記念」と言われたことがある。自分には歴史がわからない。

アパートの自転車置き場にさびた自転車があった。しかし持ち主はわからない。そもそもこのアパートは他に人が住んでいるのだろうか。それさえもわからない。前に住んでいたアパートも、「どうやら人は住んでいるらしい、歩く音はする」までの情報を掴んだものの、たまに誰かとすれ違う程度で、それが何号室の人かもわからなかったし、住んでいた間にコロコロと人が変わってた気もする。しかし、その人が引っ越した日もわからない。今回もそうだ。アパートの自転車置き場にはさびた自転車がある。それ以上のことはわからなかった。

 

どうやらこの自転車を気に入らなかった人がいる。アパートの管理会社だ。おかげで急に謎のルールが出来ていた。

「ハンドルに白い紙をつける。しばらくするとまた白い紙をつける。更に白い紙がつけられると今度は赤い紙がつけられ、赤い紙がつけられると緑の紙がつけられ、その緑の紙に書かれた期日までにこの紙をはがさなかった場合廃棄する」

あまりに猶予が長すぎて温情を感じる。白い紙をつけられるペースも1ヶ月ぐらいだった。ちなみに自分が海外にいたときに出来たルールらしく、管理会社に自分の自転車を申請しているわけでもなかったのだが、半年乗っていなかった自転車にその紙が貼られることはなかった。本当にさびた自転車を廃棄するためだけに生まれたルールだ。アパートで騒音の苦情が出た場合も、全員に対して騒音の苦情が出ているとやんわりと宣言し、それでもうるさい場合は個別に話し合っていくと聞いたことがある。これも同じだろう。

そうしてそのさびた自転車は姿を消した。

 

……実はこのルールが出来る前に何度かそのさびた自転車には黄色い警告で「これをはがさなかったら廃棄する」と貼られていたことがある。そしてそれは2回ほど防衛に成功していた。少なくとも自分が引っ越してきてしばらくの間はその自転車を廃棄されて困る人、もしくは廃棄を阻止することに楽しみを得ている人が居たのかもしれない。気になることは多いが、これ以上この自転車について知ることはもうないだろう。